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岐阜のアーティスト 画家 伏屋美希さんインタビュー@cafe ajara

岐阜の澄んだ空気が育んだ色彩の画家 伏屋美希さんのロングインタビュー。インスピレーションの源や影響を受けたアーティスト、また岐阜で活動する理由など、作品に対する思いや今後の目標などをお聞きしました。

まいぷれ岐阜編集部(以下、編):こんにちは。今日はよろしくお願いします。
伏屋さん(以下、伏):こちらこそよろしくお願いします。

編:(伏屋さんの)絵は油絵ですか?
伏:アクリル絵の具です。
編:油絵はアレルギーとか匂いがダメで、などの理由で避ける人もいるらしいですね。
伏:大学の時は油絵でやっていて。途中からアクリルだったんですけど、元々受験とかは油絵で。でも時間がかかるし、乾くのに。臭いし。
ただ、夏に60人くらいの作家さんが出展した名古屋松坂屋での展示に参加して、そこで会った24歳くらいの若い画家さんは、油絵の匂いが好きと言っていましたね。

こだわり

編:(伏屋さんの)絵は蛍光色を使っていますが、何か意図があるんですか?
伏:カラフルが好きなのと、あと混ぜるのが嫌いで。色は混ぜないんですよね、パレット上で。出してそのまま。
編:原色をべたで塗る?
伏:そうです。そうです。
編:重なっていく色合いを楽しんでいる?
伏:そうですね。混ぜてくのも面倒くさいし。画面上で楽しみたいんですね
編:テーマとか何かあるんですか?例えば、どんな人に見てもらいたい、とか。メッセージ性とか。
伏:メッセージ性というより、私は色々な人に出会うのが面白いんですね。絵を通して色々な人に出会えるのが。そっちの方が大きいですね。そこにメッセージがあるというより、楽しく描きたい
例えば海外で展示するときに、そこのギャラリーの人とか、多分根本的に違うじゃないですか。文化も違うし、生活も違うし、住んでる場所も全然違う。そういう人と会える、そのためのツールみたいな気持になってますね。最近は。
でも、良いものを作らないと自分にも自信がなくなるし、(海外のギャラリーのような)良い所にも認められることもないだろうから。
今までは「色々なところに飾りたい!」と思ってやっていたんですけど、それよりも、本当に自分が作りたいものを、正直に焦らずに作っていこうかなと思っているところです。


編:良いものの基準はどういったところなんですか?
伏:それがちょっと難しくて。今作っているものがダメなものでもないと思うんですけど。まずは自分次第なんですよね。更に、他の人に良いねと言われると確信に変わるというか。今までは展示が決まって、そのために作ることが多かったんですけど。(今後は)そういうことじゃなくて、(例えば)平面だけでなく立体でも良いし、もう少し自由にやりたいかな。
編:立体というのは、例えば川に遊びにいって落ちていた石に描いてみるとか?
伏:そうですね。あとは、布とか使って何かできたら良いなと。
名古屋のナディアパークの前に凄く広い美容室があって、天井から(作品を)掛けられたりとか。ajaraさんの奥さんのお姉さんの旦那さんがデザイナーで。その人がドレスを作って、そこにペイントしたものを展示したりとか。

編:ドレスにペイントしているんですか?
伏:それを天井からぶら下げたりとかして、この夏に。(そういったことを)自分でもっとできたら良いなと。まだ本当に実現するかわからないんですけど。
編:Tシャツとかにもいっぱいやってますよね。べたで描いてるんですか?
伏:そうですね。プリントも以前はやっていたんですが、最近はべたで。フェアトレードデイとか、アースデイとかイベントに出てその場で描いたりするのが多いですね。
編:お子さんと二人で見えて。「似顔絵描きます」はよく見ますけど、「Tシャツに描きます」はなかなかないですよね。
伏:そうですね。普通の紙にも描くんですけど、Tシャツにも描いたりとか。そんなに写実的じゃないから、面白いらしくて。
編:iPhoneケースもあるじゃないですか?あれはプリントですか?
伏:はい、あれはプリントです。あれは1個ずつ結構安くプリントできるところを教えてもらったので。同じ柄をたくさん作ってもあまり売れないし、それよりは私のHPから絵を選んでもらって、できますよ、みたいな。一点もののような感じで。

影響を受けた人・もの

編:伏屋さんはどういった人の影響を受けてきたんですか?
伏:(エゴン)シーレとかクリムトですね。
編:ジョジョとか好きですか?
伏:ジョジョは、絵は好きですけど、文字が多すぎて挫折しましたね。友達から借りたんですけど・・・。
編:結構テイストが似ているなと思って、伏屋さんの絵。
伏:あー、でもそうかもしれないですね。目力とか。
マンガだと松本大洋とか好きですね。

編:シーレに影響されてますよね。ジョジョの人は。
伏:ああ、そうなんですか!でもそういう感じですよね。あの体のこういう動とか。
編:色使いとかも。あれ(シーレ)よりもうちょっとポップにした感じですけど。(伏屋さんの絵は)更にポップにした感じで。ポップって言って良いのかわからないけど、色鮮やかな感じが。
伏:彼(ジョジョの作者の荒木先生)も確かヨーロッパで展示してますよね。ああいう動き方が良いなー
編:あの人、元々デザイナーやりたくて、でも色々あって今漫画家をやっていて。(マンガの)服とか結構斬新なデザインで。あれはデザイン画からきてるんですよね。
伏:なるほど。

伏:今だと、結構ギャラリーとか百貨店とかに飾ったりとかそういう感じなんですけど。そうやってギャラリーの人たちに認められて。凄く嬉しいんですけど、でも普通の人たちってあまりギャラリーに行かないじゃないですか。タダだし、夏とか涼しいし、もっと行けば良いんですけど。敷居高いし、タダなの!?みたいな。
編:売りつけられるようなイメージがあるんでしょうね。
伏:イメージがそうなんですよね。だからそこに飾っているだけだと狭いと思って。だからお店とかカフェとか美容室とか服屋さんとかに展示して。
絵だけじゃなくて、服にしたりとか、広がりを持たせて楽しめたら良いなって。


編:先ほどから(お店に飾ってある絵を)拝見していると、動物とかとかしか無いようなんですが、静物画を描こうというのはなく、やっぱり動きのあるものを、ということですか?
伏:そうですね。(基本的に描くのは)なんですけど、これ(動物画)は友達の写真家で動物を撮る人がいて、その人とコラボで(展示会に)飾ったときに描いたものですね。
この意思のある感じが(良い)。人だったら、楽しい時の表情でも、その中に悲しそうだったり、色々な表情が混ざって顔の表情になってて。そういう微妙なところを描きたいなって。
あと、筋肉とか好きで。

編:ついマッチョな人を想像してしまいました(笑)
伏:嫌いじゃないです(笑)
編:こういうちょっとしたシワとか、きゅっと上がった口角とか?
伏:はい。あと、踊っている人。バレリーナとか。そういう体の筋肉。
有機物が好きですね。お花とかも大好き。

岐阜で活動する理由

編:なぜ岐阜で活動しているんですか?
伏:実家があるからですね。
東京行きたかったんですけど、大学で。名古屋芸大に推薦で受かって、東京も1個受けて良いよと言われていたんですけど。うちの父がめちゃくちゃ堅い人で。国税局でマルサだったんですよね。で、「画を描く?馬鹿じゃないのか。女だったら短大行け」という人で。わざわざ画を学ばせに東京まで行かせたくなかったんでしょうね。で、名古屋芸大の入学金を払うんだったら、東京の受験は無しで、と言われて。で、まあ良いかと思って、名古屋に。

編:でも、大人になったらいつでも(東京に)行けるじゃないですか?
伏:そうなんですよね。それで、一回卒業するときに、就職しなきゃと思って、服屋さんで働いてたんですよね。1年間働いて、私はそこまで服にこだわりは無いなと。結構、女社会に揉まれて強くもなりましたが。30歳になるときにこの仕事は無理だな、と考えました。でも1年は続けようと思っ て、1年後に辞めて、そのあとしばらく無職で。
あるとき、母がホームヘルパーの仕事をしているんですけど、ホームヘルパーの講習会に今の会社の社長と当時彼女だった方が資格を取りに来ていて。

編:デザイン事務所ですよね?
伏:そうです。その時社長は資格マニアで、色々な資格を取っていて。
(社長は)面白い人で、今はマッスルにはまっていて、マッチョになってるんですけど(笑)

編:で、その講習会で今の社長さんと知り合って?
伏:はい。その講習会で母と社長が知り合って。
デザインの仕事をやりたいと思っていて、でも洋画をやっていてパソコンはあまりわからなくて、イラストレーターとか。それでどうしようかと思っていたときに母がこんな人と知り合ったよ!と言ってくれて。
その時(社長が)笠松で仕事をしていたんですけど、事務所に行ってみたら、すぐには雇えないけど、遊びにきたら教えてあげる、と言われて。それで暫く通っていたら、社長も同じ羽島北高校、名芸(名古屋芸大)出身で、一緒じゃんということで、しょうがないから雇うか、と言ってくれて。
最初は東京行こうかなと思いながらやっていたんですけど。デザインの仕事は結構面白くて、デザインなら東京か、と思っていたんですけど。でもデザインでそんなに突き抜けることはできないな、と思ったんですよね。何か大変そうやしwで、やっぱり絵を描きたいんだなと思って。
絵を描くんだったら、岐阜の方が描きやすいですよね。スペースも取りやすいし。大きい絵が描けるなと。
27歳くらいのときに迷ってたんですけど、でも結局会社の居心地が良くて。自由にやらせてくれるし、まあ良いかと。それで、このスタイルで色々(活動を)広げていって。展示とかも、mixiとかをやり始めのころに、私の絵を見て、東京で絵を描いている子が声をかけてくれて。東京で展示したいんだけど、とその子に聞いてみたら、ギャラリーを借りるのは凄く高いので無理かな、でもこういう話があるよ、とか。
そこから東京の繋がりもでき始めて、東京でも展示するようになったんですね。

あと、海外でもやりたいなと思って。日本のエージェントで、グループ展のような形でニューヨークでの展示会に参加するようになったり。ニューヨークで1枚絵が売れたんですよね!あとロサンゼルスでもやったけど売れなくて。あと香港のアートフェアに参加したりとかしています。


編:今のデザイン事務所で仕事を続けていくというよりかは、アーティストとして食べていくのが目標?
伏:どうなんですかね。デザインも結構好きで
編:どんなデザインを?
伏:住宅のチラシとか、スポーツメーカーのパッケージデザインとか、頼まれたらロゴとか。
編:それぞれ全然タッチの違うものを?
伏:そうですね。あと、カタログ作ったりとか。
編:東京に行ってやりたいと思っていたデザインの仕事もそういった感じですか?
伏:そうですね。そのときはデザイン面白いなと思ってやっていたんですけど。デザインやるなら東京で、絵を描くなら岐阜で良いかなと。
編:東京だと家賃も高くて広い場所もとれない、岐阜だと安くて広い場所が確保できる、という理由以外に、岐阜でやる理由というのはありますか?例えば、社長も岐阜の人でやりやすい、とか。
伏:岐阜の人、ゆっくりですよね、しゃべりが。あと、通勤で堤防沿いを通って羽島の事務所まで行くんですけど、これほどの景色を毎日見られるのは凄く良いことなんじゃないかと思います。
編:それはやっぱり作品に影響してきますか?
伏:わからないですけど、するような気がしますね。
東京はごみごみしてコンクリートに囲まれた環境で、そういった中だとストレスを感じるかもしれないな、とは思いますね。
外が好き、公園とかが好きですね。

編:制作は公園とか外でするんですか?
伏:制作は基本的には家の中ですけど、ライブペイントとかもやります。毎年豊橋の海辺で地元の人たちがやっている音楽フェスがあるんですけど。砂浜にステージがあって、そこにベニヤ2枚分用意してもらって、キャンバスを貼って、描くっていう。
編:そこで描くのを皆に見てもらう?
伏:そうですね。メインのステージでは音楽のライブも行われていて。
編:その大きい畳2枚分を一人で描かれるんですか?
伏:そうです。
編:炎天下で?
伏:いや、夕方から夜にかけてなんで、だんだん暗くなってくる感じですね。