普通に暮していた人間が、戦争によって運命を狂わされ、処刑をされてしまう悲劇。美しい海岸沿いの風景が、真実を受け入れられることなく散った者の深い悲しみ、切なさをより、いっそう見る者の心に染み渡らせる。50年前にTVドラマ、映画で放送され、日本中を感動させた不朽の名作を、当時、脚本、監督を務めた橋本忍自身が、リメイク。今まで、描ききれなかった夫婦の愛のエピソード、日本の美しい風景などを加えた完全版として上映される。

【ストーリー】
清水豊松は、妻のふさえと駆け落ち同然で、田舎の漁港町に流れ着き、理髪店を開く。苦しい生活が続きながらも支えあい、ようやく、親子3人で暮していく目途がついて、これからという時に、赤紙が来る。
暴力的なこととは、無縁の心優しい普通の人間が、戦時中という狂気に満ちた時代では、人を殺めることを強要された。個人の意志など全く聞き入れられず、上官に逆らうことができない時代だった。戦争が終わり、帰郷し、これで悪夢から解放されたと思っていた矢先に、再び悪夢が訪れる。戦時中に上官から強要された捕虜に対する行為の罪を問われて、逮捕。戦犯として、処刑を言い渡されてしまう・・・。

【見どころ】
SMAPの中居正広が主役を務めることでも話題が大きいが、仲間由紀恵が演じる妻ふさえとの夫婦の絆と家族愛が大きな見どころ。普段、バラエティーで見せる顔とは、全く別の顔を見せてくれる。石坂浩二、武田鉄矢など脇を固める俳優陣も豪華。悲劇のストーリーが途中、重くなりすぎず、最後の最後まで豊松と一緒に希望を抱いてストーリーを追うことになる。なので、結末はショッキング。こんな現実は、有り得ない・・・、有ってはならないと思いが、いつまでも胸の奥に残る。映画全般にわたって、切なさを際立たせる壮大で美しい風景もポイント。厳かで神秘的な海岸の風景が、目に焼きついて離れない。

…text by nagai